#01 前向きになれる本
「きりこについて」西 加奈子
この冒頭を見た瞬間、絶対おもしろい物語だと確信しました(笑)
二文目からは、いかに主人公のきりこちゃんがぶすであるかをつらつらしつこいくらい詳しく説明してくれます。
しかし、読者に「そんなにぶすだなんてかわいそう・・・」なんて思わせないほど、きりこちゃんは両親に「かわいい、かわいい」と言われながらとっても愛されてとっても幸せに生きています。
自己肯定感の塊のようなきりこちゃんの堂々たるふるまいはなんともうらやましい。
しかし、あるときを境にきりこちゃんは自分がぶすだと知り、物語の色が一気に変わります。
絶望したきりこちゃんが自分とどう向き合い、周りの人にどんな影響を与えていくのか。
ルッキズムや性犯罪などの重たい問題を絡めつつも、きりこちゃんの生き様や大きな愛が心に刺さります。
読み終わったときに少し自分が好きになる、自分を大切にしたくなる、そんな物語でした。
「ミッキーマウスの憂鬱」松岡 圭祐
ディズニーランドのバックステージを舞台にした物語です。憧れのディズニーランドでキャストとして働く主人公が、夢の国を作り上げる大変さを感じながら奮闘します。パレード準備の様子など実際は見られないシーンもたくさん出てきてわくわくしながら読める、成長青春物語!と思っていたのですが・・・。個人的には「学歴差別」の問題を訴えているんじゃないかと感じました。同じ仕事をしていても大学を出ているほうが優秀だという偏見、立場を利用した理不尽さ、あきらめ。「働く」ということを通して見えてくる負の部分がしっかりと描かれています。働く上で自分が一番大切にしたいことは何か?なぜこの仕事を選んだのか?もがきながらも前に進む主人公の姿が、そんな自分の原点に立ち返らせてくれます。
「くちぶえ番長」重松 清
私が読書を好きになったきっかけの本です。
小学生のころ、文章を読むのが苦手で国語の読解問題が全然できなかったんです。
そこで塾の先生に「本を好きになったらいい」と言われて渡されたのがこの本でした。
気が進まないまま読み始めてみると、軽快なテンポで物語が進んでいってあっという間に読めてしまい、「本っておもしろいんだ!」と納得させられました。
そこから文章を読む楽しさを知った私は、国語の成績もぐんと伸びたんです。
小学四年生のツヨシのクラスに一輪車と口笛が上手な女の子マコトが転校してきて、そこから繰り広げられる友情物語です。
大人になった今読み返してみてもおもしろくて前向きな気持ちになれる小説です。